自社製機で宇宙の旅へ

東海企業の戦略家たち『挑む』<2>

 ■名古屋「PDエアロスペース」社長・緒川修治さん
 「自分で造った宇宙飛行機で宇宙へと飛び立ちたい」―。「PDエアロスペース」(名古屋市)社長の緒川修治さん(37)はこの思いを胸に昨年5月に宇宙機開発を目的に起業した。宇宙に人生を懸ける『夢追い人』の熱意とは。(誠)
 同社は2011年に宇宙空間との境界線の高度100キロ地点に到達可能な無人宇宙機、14年に有人宇宙機の開発を目指している。最終目標は日本の会社として初の「宇宙旅行」の実現だ。
 緒川社長の構想では開発する宇宙機は音速旅客機コンコルドに似た機体で、パイロットを含めて5人乗り。機体のサイズは全長8・8メートル、幅約8・1メートル、高さ4・2メートル、重量7・0トン。動力は燃焼室内で高速燃焼を繰り返すことで得られる衝撃波を推進力とする「パルスデトネーションエンジン」(PDE)だ。PDEは宇宙機エンジンでは未利用で「研究開発次第でマッハ2のコンコルド以上、マッハ4―5まで出せる可能性がある」と緒川社長は言う。

 ■社員4人と技術スタッフ3人
 同社は名古屋市緑区の名鉄有松駅に程近い旧東海道の外れの実家の敷地内にある。事務所は広さ6畳程度、作業机は2席。社員は事務員2人を含めて4人。ほかに技術スタッフが3人いるだけだ。宇宙機開発を進める研究所はその隣、広さは事務所の2倍程度だ。
 取材した日、研究所内では緒川社長の父尚孝さん(68)がPDEの基礎となるパルス燃焼の実験を行っていた。尚孝さんはパルス燃焼の研究を?年間続けている、その道の第一人者。緒川社長は父の背中を見て育ち、今それを宇宙機開発に生かそうと努力している。
 PDEや機体の開発は社長自ら先頭に立って行っている。既にPDEを積んだラジコン機で飛行実験を実施。現在は風洞実験を行うための実際の機体と同じ形の模型を製作中。ことし8月にはその模型を基に長さ1・8メートルのラジコンを製作し、飛行実験を行う予定だ。
 だが事務所の2倍程度の広さしかない今の研究所は本物の宇宙機開発をするには狭過ぎる。計画では有人機2機を収納できる格納庫や搭載するエンジンの実験を行う大きな研究室を3年以内にも別の場所に構える予定だ。
 「機体の構想は大体出来上がっている。でも今は研究開発より資金繰りに必死」と緒川社長。開発費は100億円近くと想定しているが、現状の資金では足りない。
 現在は優秀者が投資を得られるベンチャー企業コンペへの参加や、一般市民から1口1万円以上の投資を募って資金集めを展開。大学などと連携することで事業の認知や投資拡大を狙う。
 「日本初の有人宇宙機を応援する『サポーター』を増やしていきたい。1口1万円は小さいが、少しずつでも確実に宇宙船開発の力になっていく」と緒川社長は市民1人1人の後押しが『元気玉』のように大きな力となると信じている。

 ■米ベンチャー企業に続け
 緒川社長は若いころ、航空機のパイロット志望だった。しかし年齢制限の?歳までに各航空会社の認定試験に合格できず断念。次に?歳を区切りとして宇宙飛行士を目指したがこれも失敗。
 同じころの04年10月、米財団主催の宇宙旅行可能な宇宙機開発を条件とした「エックスプライズ」というコンテストに同国のベンチャー企業「スケールドコンポジット社」が成功。これが起業のきっかけとなった。
 「宇宙飛行士を目指している最中には『PDEで宇宙機を』との構想が頭の中で出来上がりつつあった。成功のニュースを見た時に??日本でも実現させてやる?≠ニ決心しましたね」
 日本国内での宇宙飛行機開発は政府も主要メーカーも手を引いている状態で、緒川社長は後はベンチャーしか残っていないと力説する。「宇宙機開発の実績がない日本での開発は誰がやっても難しい。だからこそ??おばかさん?≠ェやるしかない。ここで先鞭(せんべん)をつければ大手企業も付いてくるはず」と日本初の取り組みに意気込んでいる。

 ■『格安ツアー』39万8000円
 緒川社長は宇宙機開発の成功後の目標を一つ立てている。
 それは宇宙旅行ツアーを「39万8000円」で販売することだ。現在は「スケールド―」から技術提供を受けた米国の宇宙旅行ビジネス会社が販売する宇宙旅行ツアーの代金は20万ドル(約2300万円)。
 緒川社長は「宇宙に家族旅行できるようにしたい。子どもたちに気軽に青い地球の美しさを宇宙から眺めることを通じて地球の大切さを知ってほしいですね」と話す。
 いつかは母なる地球の尊さを次世代に伝えるため―。果てしなき挑戦はまだ始まったばかりだ。

   ◇会社概要◇ PDエアロスペース(緒川修治社長)07年5月30日創業、資本金1000万円。住所は名古屋市緑区有松町橋東南26―4。?рO52(621)6996。URLはhttp://www.pdas.co.jp/事業内容は航空機、宇宙機の研究開発・製造など。
【写真説明】有人宇宙機開発を目指す緒川修治社長
(2008年1月28日更新)


28日のニュース



コラム



サイト内検索


AND OR
このページの著作権は社団法人名古屋タイムズ社に属します。無断での複写、転載を一切禁じます。
Copyright(C)2008 The Nagoya Times All Right Reserved.